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guranotime

趣味全開

答えはそこにある。

中学三年生、後半の半年間は、高校受験がメインだった。

 

僕の県の高校受験のレベルはそんなに高くなくて、日本でも下から数えた方がはやいくらい。県トップレベルの上位校は「独自入試」なるものを行っていたけれど、それ以外は県が出題する「共通入試」を使っていた。

 

僕が狙っていたのは、その「共通入試」でトップになる高校。いわゆる、旧学区のトップ校というやつだ。県トップレベルの上位校ではないが、それなりの偏差値と、それなりの大学進学率と進学先を誇る。何でそこを狙ってたかっていうと、距離だよ距離。家から10分だった。徒歩圏最高ですよマジで。落ちるわけにはいかなかった。

 

が、一つ問題があって、その学校を受けるレベルの受験生にとっては、その「共通入試」が簡単の極みだった。そもそも中学生の勉強範囲なんて難しいものはほとんど無いので、塾にさえ行って、半年間みっちり(とは言っても大学受験に比べれば、レトリバーにとってのチワワみたいなものだけども)やれば、誰でも満点が取れるレベル。そこそこの偏差値の受験生にとっては、当然、満点を取って当たり前の試験内容だ。

 

何が問題かというと、差がつかないのである。みんなが満点近い点数を取るから。すなわち、わずかなケアレスミスが命取りになることを意味する。

 

そういった受験は、もちろん、解く方としては、高校や大学でしばしば見受けられる「ほとんどの問題が意味分からんし、平均点も3割そこそこの試験」を受けるよりも楽しいけれど、全くケアレスミスが許されないのは油断ならない。これ!真剣ゼミで出たやつだ!と興奮しても、凡ミスしてしまえば意味がないのだ。

 

と、いうことで当時の僕も、当然ながら全教科で満点を狙っていた。

 

今はもう変わってしまっているらしい受験制度についてちょっと書くと、まずだいたいの人が公立高校狙いで、私立を一つ滑り止めに受ける。これはだいたい、名前さえ書けば受かる。そして公立高校も、前期(成績+面接)、後期(成績+試験)or(試験一発勝負)の二つの試験にわかれていたけれど、前期はよっぽど成績が良くないと受からない。成績が低かった僕は当然のように落ちたので、後期の試験一発勝負を狙うことにした。

つまり、全教科満点である。

 

パッと聞き難しそうだけど、先に書いたように「共通入試」はクソほど簡単。ケアレスミスさえしなければよい。

 

受験当日の日は、それなりのコンディションで迎えた。勉強については、バッチリだ。教室も、同じ中学の人が二、三人いて、そこまで緊張せずに受けることができた。

 

午前中の英語・数学・国語を難なく終わらせ、昼を友人と食べ、午後の理科・社会に備えた。当時は理数系が苦手という意識もなかったし、特に社会は歴史オタクであったことも相まって得意だったので、余裕だろ、くらいの気持ちでいた。

 

が、理科の試験を受けている最中。問題が起きた。

 

「漢字が分からない」

 

ヤバい。

理科の試験あるある。国語で出る漢字問題はしっかり対策してあるが、理科でまさか漢字が分からないなんて、とんだ伏兵だった。しかも全部分からないんじゃなくて、一文字の、ある一部分だけが分からなかった。

 

「溶解度」

と答える問題で、

 

「解」の右下は、はたして

「牛」なのか、「午」なのか

 

という疑問が頭をよぎってしまったのである。

今ここで読んでいる人はもちろん「牛」が正しいだと分かるし、そもそもそんな難しい漢字じゃないんだけど、試験中の僕はとにかく、これで頭がいっぱいになってしまった。

 

とりあえず他のすべての問題と、軽い見直しを先に終えて、残った15分間すべてを懸けて「牛」か「午」か、考えてみることにした。

 

時間だけはあったので、とにかくたくさん「牛」バージョンと、「午」バージョンを書き出してみた。どっちもしっくり来てしまう。教室を巡回している先生に、その努力を見られるのが少し恥ずかしかった。

 

10分ほど粘ってみたが、分からないものは、分からない。諦めて平仮名か片仮名で書くか...でもそれで点数下がったらどうしよう、落ちたくねええ。時間はもう最後の5分である。

 

「残り5分になりました。問題用紙、解答用紙にもう一度名前が書いてあることを確認して、提出に備えてください」

 

先生がタイムリミットを告げる。ヤバい。

 

理科満点への道が閉ざされそうになった。

その時。

 

ん?

 

今、なんて言った?

 

先生が今言ったことを、頭の中で復唱してみた。

「残り5分になりました。問題用紙、解答用紙にもう一度名前が書いてあることを確認して、提出に備えてください」

 

 

!!!

 

解答用紙!!!

 

ちらと用紙の上を見ると

そこには「解答用紙」の文字が!

 

「牛かぁあああ!」

思わず声が出そうになった。

 

今までさんざん、「牛」とか「午」とか書いてきたその裏に、なんと答えがそのまま書いてあった。

10分ほど何もせずに無駄にしたけど、この際、まあ、いい。

 

僕は悠々と「溶解度」と解答用紙に書き込むと、ペンを置いた。

勝った、そう思った。

 

理科の試験が終わると、すぐに友人に「解」について話した。シンプルに嬉しかった。友人は、少しでも社会の勉強したいから失せろ、という顔をしていた。

 

その後の社会の試験は、さすが得意教科なので、問題なく終わった。

こうして僕の高校受験は幕を閉じた。

 

結果は合格で、理科は満点だった。

そして高校生活をエンジョイして、大学も合格した。今のところ(受験系に関しては)挫折のない人生だ。

 

もし試験中、分からないことがあったとしても、諦めてはいけない。考えても考えても分からない時は、少し周りを見渡してみよう(カンニングにならないように)。今回の例のように、最早ダイレクトに答えが書いてあることも、あるかもしれない。落ち着いて余裕を持つことも大切だ。

 

でも、自信あった社会はズタボロだった。

人生はよく分からない。