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guranotime

趣味全開

スタンド・バイ・ミー

自転車 ズイヒツ 雑感
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小学生2年生の頃。

新しい自分専用の自転車を買ってもらって、
僕達の行動範囲は一気に広がった。

横浜の外れ、坂道の多い住宅街。
自分の家から学校までのセカイを越えて
縦横無尽に駆け巡った。

特に、長い坂道を下るとき、
僕達は、風になった。
そう思った。

風に乗って、どこまでだって行ける。
そう思っていた。

夏休みのある日、同級生の荒川君と遊ぶことになった。

その時はまだ、DSだとかいったゲームが流行る前だったから
僕達はよく外に出て、冒険した。

荒川君は苗字通り、破天荒な性格で、
彼との冒険は、いつも"本当に"冒険だった。

「今日は自転車で、行けるところまで行ってみようぜ」

そんな彼の提案を二つ返事で了承し、
僕達は出発した。

はじめは、家の近くで、知っている道だったけれど、
線路を越えて、お寺を越えて、
いよいよここから先は、初めて来る、という場所まで来た。

その入口は長い、下りの坂道だった。

僕達はこの坂を下ったことがない。
先にどんな世界が広がっているのかも知らない。

まあ、大丈夫だよ。来た道を辿れば帰れるから。
そんな風に自分に言い聞かせる。

胸が高まる。
坂道の上に並んだ。

遠く、横浜のビル群まで見える。

「行くか」

荒川君の合図で二人、
いっせいに自転車を漕ぎだした。

風になった。

小学二年生の夏休み
僕達は、風になった。

そこから先少し、記憶がない。

気がついたら、僕達は迷子になっていた。

住宅街は、どこも景色が似てるから
来た道を辿るなんて出来なかったのだ。

知らない地名、知らない道、もうすぐ暮れそうな夕陽
あてもなく、自転車でさまよっても、どうしようもなかった。

泣きたくなった。
けど、僕達は泣かなかった。

荒川君は破天荒だし、僕もそれに乗っかったのだ。
意地でも帰ってやる。親に怒られる時間になる前に。

「車の音がする、大きい道に出よう」
そしたら街の名前が書かれた標識があるから。
荒川君の提案は、こんな時も頼りになる。

が、住宅街を走り回っても、
なかなか大通りは見つからなかった。

その後も、川を渡ったり森を超えたり、
どんどん沈んでいく夕陽を背に
僕達は自転車を漕いだ。

そして、初めてみる神社についた。
喉も乾いたし、お腹も空いていたが、
少し休憩することにした。

蝉が騒がしく鳴いていた。

本当に帰れるのか、二人とも疑いはじめていたと思う。

しばらく、階段に座っていると
おじいさんがやってきた。

住宅街だから、他にも人がたくさんいたはずだったけど、
何故か、このおじいさんだけ覚えている。

素直に道を聞いた。

「ここから一番近い大きな通りはどこですか」

聞くに、意外と、すぐ近くだった。

森中の蝉が鳴いてるから、
車の音が聞こえなかったらしい。

「ありがとうございます」

夢中で走りだした。
大通りに出た。

何度か来たことのある道だった。

「おお!帰れる!」
「やったな!」

ここから家まで、30分位。
あまり疲れてはなかった。

僕達は何とか、太陽が沈まないうちに、家についた。
でも、親にはこっぴどく怒られた。


これが、はじめての自転車での冒険の話。

その後、荒川君ともしばらく交流があったけど
中学を卒業した後はばったり疎遠になった。

風のうわさでは、どうやら高校を中退したらしい。
相変わらず破天荒だ。

その神社は、高校の時に通っていた塾から近く
冒険を思い出しながら何度か行った。
自分が大きくなったからか、あの時よりも小さく、狭く感じる。

それ以外のこと、どういう道を通って神社まで来たのかは、
今では、全く思い出せない。